糖尿病網膜症とは
糖尿病網膜症とは、目にでる糖尿病の合併症で、糖尿病腎症、糖尿病神経障害と並ぶ糖尿病三大合併症のひとつです。
糖尿病網膜症は進行が進むと失明に至り、日本では緑内障に次いで失明原因2位になっています。進行し重症になるまで自覚症状はほとんどありませんが、糖尿病患者の約40%が糖尿病網膜症になってると言われています。
糖尿病網膜症の症状
糖尿病発症から10年くらいで、視界のかすみ、小さな虫が飛んでいるように見える飛蚊症、視力低下といった症状が現れます。
しかし糖尿病網膜症は、初期段階では自覚症状があまりありません。自覚症状が現れるようになったら病症がかなり進行しているので、そうなる前に症状がなくても眼科を受診するようにしましょう。
糖尿病網膜症の原因
糖尿病にかかると、糖分の高い血液が血管に常に流れているため、血管に負担がかかってさまざまな障害が起こります。
網膜の血管は特に細く、血管がつまったり出血しやすいため糖尿病網膜症になります。
また、古い血管が機能しなくなると新しい血管が作られるのですが、この新しい血管はとてももろく、出血を繰り返し、やがて視力低下に至ります。
網膜症はカメラのフィルムと同じ役割をしています。フィルムに障害があると写真がきちんと写らないように、糖尿病で網膜に障害がおこると、視力低下や失明などにつながるのです。
糖尿病網膜症の進行
糖尿病網膜症の進行は、3段階に分けられています。
・単純糖尿病網膜症
網膜の血管から出血や血液成分が漏れ出し、小さな点やシミが網膜にできます。
ほとんどは自覚症状がありません。
・前増殖糖尿病網膜症
網膜のシミが増えて、網膜に酸素が行きわたらない部分が数多く表れてきます。新しい血管を作り始める一歩手前の、危険な状態です。
視界のかすみを訴える人はいますが、この段階でも自覚症状はあまりありません。
・増殖糖尿病網膜症
新しい血管ができてそこから出血や血液成分の漏れを繰り返し、膜ができてきます。症状としては飛蚊症や急な視力低下を引き起こします。
また、網膜剥離を起こして失明になりやすい状態です。
糖尿病網膜症の治療
一番大切なのが血糖コントロールです。血糖コントロールが良ければ糖尿病は何も体に悪い影響は与えません。血糖コントロールの中心は食事療法と運動療法です。
最近は糖尿病治療薬もどんどん新しいものが出てきて、ひと昔前に比べるとコントロールの良い人が随分増えたように思います。
血糖コントロールの良しあしはHbA1cで見ていきますが、HbA1cが高ければ高いほど、罹患期間が長ければ長いほど、網膜症は重症化します。
視力障害に大きくつながる要因は、新しい血管からの出血と黄斑部と言われる網膜の中心部のむくみです。
進行が進んでいれば網膜光凝固術で網膜にレーザーを当て、新しい血管の発生を防いだり、目の中に注射をしたりします。
さらに進行が進んでる場合やレーザーでも改善しない場合、視力がひどく低下した場合は、硝子体手術を行います。
硝子体は眼球内に満ちている透明なゼリー状の物質で、新しい血管から出血が起こると血液が邪魔をして視力が低下します。硝子体手術ではこの出血を吸い取り、網膜剥離があれば元に戻す手術を行います。