ラプシド錠25mg(レミブルチニブ)とは
慢性蕁麻疹の新しい飲み薬
「抗ヒスタミン薬を飲んでいても、じんましんとかゆみを繰り返す」
「注射以外の治療選択肢を知りたい」
このようなお悩みはありませんか。
ラプシド錠25mg(一般名:レミブルチニブ)は、既存治療で十分な効果が得られない成人の特発性の慢性蕁麻疹に対して、2026年6月に国内承認された飲み薬です。
肥満細胞などの活性化に関係する**BTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)**を阻害する、新しい作用の治療薬です。
このページでは、ラプシドの対象となる方、効果、飲み方、副作用、出血・手術・ワクチン・併用薬に関する注意点、薬価と発売状況について、皮膚科専門医の立場から分かりやすく解説します。
【重要:2026年8月24日現在】
ラプシドは国内で製造販売承認を受けていますが、現時点では薬価基準に未収載で、販売開始前です。したがって、まだ一般の保険診療で処方できる段階ではありません。薬価・発売日・当院での取扱いが決まり次第、このページを更新します。
ラプシドは2026年6月19日に、「特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る)」を効能・効果として承認されました。通常、成人には1回25mgを1日2回服用します。
ラプシド錠25mgの概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売名 | ラプシド錠25mg |
| 一般名 | レミブルチニブ(Remibrutinib) |
| 薬の種類 | 慢性蕁麻疹治療剤・BTK阻害薬 |
| 効能・効果 | 特発性の慢性蕁麻疹(既存治療で効果不十分な患者に限る) |
| 対象 | 成人 |
| 通常の用法・用量 | 1回25mgを1日2回、経口投与 |
| 製造販売 | ノバルティス ファーマ株式会社 |
| 国内承認日 | 2026年6月19日 |
| 現在の状況 | 2026年8月24日現在、薬価未収載・販売開始前 |
ラプシドは、蕁麻疹が出たときだけ一時的に飲む市販薬ではありません。
症状の種類、これまでの治療、服用中の薬、出血のリスクなどを確認したうえで、蕁麻疹の治療に精通した医師が使用を判断する処方箋医薬品です。
ラプシドはどのような方が対象になりますか
ラプシドは、次のような状態の成人に追加して使用する薬です。
- 食物や物理的刺激など、蕁麻疹を誘発する明確な原因が特定されない
- じんましんやかゆみが6週間以上続く、または繰り返している
- 第2世代抗ヒスタミン薬の増量など、適切な治療を行っても効果が不十分
- 強いかゆみを伴う膨疹が繰り返し現れる
- 睡眠、仕事、家事など、日常生活に支障が生じている
電子添文では、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の増量などを行っても、日常生活に支障をきたすほどのかゆみを伴う膨疹が繰り返し認められる場合に、ラプシドを追加することとされています。
すべての蕁麻疹が対象になるわけではありません
次のような蕁麻疹は、診断や治療方針が異なります。
- 発症してから6週間以内の急性蕁麻疹
- 食物アレルギーによる蕁麻疹
- 薬剤による蕁麻疹
- 寒冷、圧迫、運動、発汗などで誘発される蕁麻疹
- 蕁麻疹様血管炎など、別の病気による発疹
まずは、症状が続いている期間、発疹の出方、原因となりそうなもの、これまでに使用した薬を確認することが重要です。
ラプシドはどのように効く薬ですか
蕁麻疹では、皮膚にある肥満細胞や血液中の好塩基球が活性化し、ヒスタミンなどの炎症を起こす物質を放出します。
その結果、皮膚に次のような症状が現れます。
- 赤み
- 盛り上がりのある発疹・膨疹
- 強いかゆみ
- まぶたや唇などの腫れ・血管性浮腫
ラプシドは、肥満細胞や好塩基球の細胞内にあるBTKの働きを阻害します。
蕁麻疹が起こる流れ
IgEやIgG自己抗体などの刺激
↓
BTKを介した細胞内シグナル
↓
肥満細胞・好塩基球の活性化
↓
ヒスタミンなどの放出
↓
膨疹・かゆみ
抗ヒスタミン薬との違い
抗ヒスタミン薬は、すでに放出されたヒスタミンが受容体に結合するのを抑える薬です。
一方、ラプシドは、その上流にあるBTKを阻害し、肥満細胞や好塩基球からヒスタミンなどが放出される過程を抑えると考えられています。
作用する場所が異なるため、抗ヒスタミン薬だけでは症状を十分に抑えられない方に対する新しい選択肢となります。
ただし、ラプシドがすべての方に有効というわけではありません。効果や副作用には個人差があります。
当院とラプシドの治験について
皮ふ科眼科 くめクリニックは、ラプシドの開発につながる治験に協力した医療機関です。
当院では、皮膚科専門医である院長を中心に、医師、薬剤師、看護師、治験コーディネーターが連携して治験を実施してきました。当院の公式ホームページでも、ラプシドを「当院が開発に貢献した薬」として掲載しています。
治験に関わった経験があるからといって、ラプシドをすべての患者さんに勧めるわけではありません。
診察では、次の内容を確認し、一人ひとりに合った治療を検討します。
- 蕁麻疹の種類と重症度
- これまで使用した薬とその効果
- 現在服用している薬
- 出血しやすい病気の有無
- 妊娠、授乳、妊娠希望
- 手術や抜歯の予定
- ワクチン接種の予定
- ほかの病気や治療内容
ラプシドの飲み方
通常、成人にはレミブルチニブとして、1回25mgを1日2回服用します。
服用中は、次の点にご注意ください。
- 用量や回数を自己判断で増減しないでください
- 飲み忘れたときに2回分を一度に服用しないでください
- 症状が落ち着いても自己判断で中止しないでください
- PTPシートから錠剤を取り出して服用してください
- 飲み忘れた場合の対応は、処方時の指示に従ってください
ゾレアやデュピクセントとの併用について
ラプシドと、慢性蕁麻疹に用いる生物学的製剤との併用は、安全性と有効性が確立していません。
そのため、電子添文では生物学的製剤との併用を避けることとされています。
臨床試験で確認されたラプシドの効果
ラプシドの国内承認は、主に次の試験結果に基づいています。
- 国際共同第Ⅲ相試験 REMIX-1
- 海外第Ⅲ相試験 REMIX-2
- 国内第Ⅲ相試験 BISCUIT
UAS7とは
UAS7は、7日間の膨疹とかゆみを合計した評価指標です。
0~42点で評価し、点数が低いほど症状が少ないことを示します。UAS7が0点の場合は、7日間に膨疹とかゆみがなかった状態です。
| 試験 | 12週時のUAS7変化量 | 12週時にUAS7=0となった割合 |
|---|---|---|
| REMIX-1 | ラプシド群 −20.02/プラセボ群 −13.79 | ラプシド群31.1%/プラセボ群10.5% |
| REMIX-2 | ラプシド群 −19.41/プラセボ群 −11.73 | ラプシド群27.9%/プラセボ群6.5% |
いずれの試験でも、12週時の症状改善について、ラプシド群とプラセボ群の間に統計学的な差が確認されました。
ただし、これらは臨床試験全体の結果です。個々の患者さんに同じ効果が得られることを保証するものではありません。
ラプシドの副作用
電子添文に記載されている主な副作用は次のとおりです。
| 頻度 | 報告されている症状 |
|---|---|
| 1~5%未満 | 上気道感染、点状出血 |
| 1%未満 | 紫斑、挫傷、斑状出血、鼻出血、歯肉出血 |
| 頻度不明 | 結膜出血 |
特に、次のような症状がある場合は、自己判断で放置せず、処方した医療機関へご相談ください。
- あざが増えた
- 小さな赤い点状の出血が増えた
- 鼻血が止まりにくい
- 歯ぐきからの出血が続く
- いつもと違う出血がある
ラプシドでは出血に関連する副作用が報告されているため、手術、抜歯、抗血栓薬の使用なども含めて確認が必要です。
ラプシドを服用するときに特に注意すること
手術・抜歯・出血を伴う処置
ラプシドには出血リスクを高める可能性があります。
手術の種類や出血リスクに応じて、手術前後3~7日間の服用中断を検討することがあります。
抜歯、内視鏡検査、日帰り手術などを予定している場合も、事前に処方医と処置を行う医師・歯科医師の両方へお伝えください。
自己判断で休薬しないでください。
ワクチン接種
ラプシド服用中のワクチン接種には注意が必要です。
生ワクチン
ラプシド服用中は、安全性が確認されていないため接種しません。
不活化ワクチン
十分な免疫効果を得るため、ワクチン接種の1週間前から接種2週間後まで、ラプシドの服用中断を検討することがあります。
ワクチンを予約する前に、ラプシドを服用していることを医師へお伝えください。
妊娠・授乳
妊娠中または妊娠している可能性がある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に限って使用を検討します。
妊娠する可能性のある女性は、ラプシド服用中および最終服用後1週間、適切な避妊が必要です。
授乳中の方は、治療の必要性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳を続けるか中止するかを検討します。
小児
小児を対象とした臨床試験は実施されていません。
国内で承認された用法は成人が対象です。
服用中の薬
ラプシドは、ほかの薬の作用や血中濃度に影響する可能性があります。
次の薬を使用している場合は、必ずお薬手帳をお持ちください。
- クラリスロマイシン
- イトラコナゾール
- リトナビル
- カルバマゼピン
- リファンピシン
- フェニトイン
- ジゴキシン
- ダビガトラン
- コルヒチン
- メトトレキサート
- ワルファリン
- リバーロキサバン
- アピキサバン
ここに記載されていない薬、市販薬、漢方薬、サプリメントでも確認が必要な場合があります。
自己判断で薬を中止せず、医師または薬剤師にご相談ください。
抗ヒスタミン薬・ゾレア・デュピクセントとの違い
| 治療 | 主な作用 | 投与方法 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 第2世代抗ヒスタミン薬 | ヒスタミンH1受容体を遮断 | 内服 | 慢性蕁麻疹の基本となる治療 |
| ラプシド | BTKを阻害し、肥満細胞などの活性化を抑制 | 1日2回の内服 | 既存治療で効果不十分な成人が対象 |
| ゾレア | IgEに働く生物学的製剤 | 皮下注射 | 成人および12歳以上の慢性蕁麻疹に使用 |
| デュピクセント | IL-4・IL-13のシグナルを抑制 | 皮下注射 | 成人および12歳以上の慢性蕁麻疹に使用 |
内服薬か注射薬かだけで、治療の優劣が決まるわけではありません。
次のような内容を踏まえて、治療を選択します。
- 症状の強さ
- 年齢
- これまでの薬の効果
- 併存疾患
- 妊娠・授乳
- 出血リスク
- 通院のしやすさ
- 注射に対する希望
- 服用中の薬
ラプシドの薬価・保険適用・発売日はいつですか
ラプシドは2026年6月19日に国内承認されましたが、2026年8月24日現在、薬価基準には収載されていません。
2026年8月13日に適用された厚生労働省の最新薬価基準収載品目リストにも掲載されておらず、同時期に予定されていた薬価収載は見送られたと報告されています。
そのため、現時点では次の内容を確定してご案内できません。
- 薬価
- 1か月あたりの薬剤費
- 患者さんの自己負担額
- 発売日
- 当院での処方開始日
薬価基準に収載され、販売が開始された後は、承認された効能・効果の範囲で保険診療の対象となることが見込まれます。
実際の負担額は、決定された薬価、処方日数、自己負担割合、高額療養費制度の適用などによって異なります。
薬価や発売日が決まり次第、このページの冒頭と「よくあるご質問」を更新します。
慢性蕁麻疹で受診される方へ
ラプシドが販売開始前であっても、慢性蕁麻疹の診断や、現在利用できる治療についてご相談いただけます。
受診時には、次の情報をお持ちいただくと診察に役立ちます。
- 症状が始まった時期
- 症状が6週間以上続いているか
- 発疹が出たときの写真
- これまで使用した薬の名前
- 薬の量と使用期間
- 薬を飲んだときの効果
- お薬手帳
- 市販薬やサプリメントの情報
- 1週間のかゆみと膨疹の記録
- 妊娠、授乳、妊娠希望の有無
- 手術や抜歯の予定
- ワクチン接種の予定
蕁麻疹は、受診時には消えていることも少なくありません。
症状が出たときに、発疹の全体像と拡大写真をスマートフォンで撮影してお持ちください。
ラプシドについてよくあるご質問
- ラプシドはどのような薬ですか?
-
既存治療で効果不十分な成人の特発性慢性蕁麻疹に使用する飲み薬です。
肥満細胞などの活性化に関わるBTKを阻害し、ヒスタミンなどの放出を抑えます。
- ラプシドはステロイドですか?
-
いいえ。
ラプシドはステロイドではなく、BTK阻害薬です。 - 蕁麻疹があれば誰でも使えますか?
-
いいえ。
対象は、原因が特定されない慢性蕁麻疹で、抗ヒスタミン薬の増量など適切な既存治療を行っても効果が不十分な成人です。急性蕁麻疹や、原因が明らかな蕁麻疹では治療方針が異なります。
- 何歳から使えますか?
-
国内で承認された用法は成人が対象です。
小児を対象とした臨床試験は実施されていません。 - 1日に何回飲みますか?
-
通常は1回25mgを1日2回服用します。
用量や回数を自己判断で変更しないでください。 - 抗ヒスタミン薬と一緒に飲めますか?
-
ラプシドは、抗ヒスタミン薬の増量など適切な治療でも効果が不十分な場合に追加する薬として承認されています。
実際の併用方法は、症状や服用中の薬を確認して医師が判断します。 - ゾレアやデュピクセントと併用できますか?
-
慢性蕁麻疹に用いる生物学的製剤との併用は、安全性と有効性が確立していません。
電子添文では、併用を避けることとされています。 - どのくらいで効果が分かりますか?
-
効果の現れ方には個人差があります。
承認の根拠となった試験では、主な有効性を12週時点で評価しています。
自己判断で中止せず、医師と症状を確認しながら治療を続けます。 - 主な副作用は何ですか?
-
上気道感染、点状出血、紫斑、あざ、鼻血、歯ぐきからの出血などが報告されています。
いつもと違う出血がある場合は、医療機関へご相談ください。 - 抜歯や手術の予定がある場合はどうしますか?
-
出血リスクに応じて、手術前後3~7日間の休薬を検討することがあります。
自己判断で休薬せず、処方医と、処置を行う医師・歯科医師へ事前にお伝えください。 - ワクチンを接種できますか?
-
服用中の生ワクチンは接種しません。
不活化ワクチンでは、接種1週間前から接種2週間後までの休薬を検討することがあります。
接種前に医師へご相談ください。 - 妊娠中や授乳中でも使用できますか?
-
妊娠中は、治療上の有益性が危険性を上回る場合に限って使用を検討します。
妊娠する可能性のある女性は、服用中と最終服用後1週間の避妊が必要です。
授乳中の方も、服用前に医師へご相談ください。 - ラプシドの薬価と発売日は決まっていますか?
-
2026年8月24日現在、薬価基準には未収載で、販売開始前です。
緊急性の高い症状について
次のような症状がある場合は、通常の外来予約を待たず、救急要請を含めて速やかに医療機関を受診してください。
- 唇、舌、のどの腫れ
- 息苦しさ
- 声が出しにくい
- のどが詰まる感じ
- 意識が遠のく
- 強いふらつき
慢性蕁麻疹の症状でお困りの方へ
抗ヒスタミン薬を続けても、かゆみや膨疹を繰り返す場合は、これまでの治療内容を確認したうえで、現在利用できる治療選択肢をご案内します。
発疹が出ているときの写真と、お薬手帳をお持ちください。