多汗症は、汗をかく量が多くて困る状態のうち、日常生活に支障をきたすほどの過剰な発汗がみられる病気です。日本皮膚科学会の診療ガイドラインでは、頭部・顔面、手のひら、足の裏、脇に、温熱や緊張などに伴って、またはそれらによらず大量の汗が出て、生活に支障をきたす状態を原発性局所多汗症としています。
多汗症には、体の一部だけに汗が増える局所性多汗症と、全身に汗が増える全身性多汗症があります。また、はっきりした原因のない原発性と、感染症、内分泌・代謝疾患、神経疾患、薬剤などが関係する続発性に分けて考えます。
原発性局所多汗症は、幼少期から思春期ごろに始まることが多く、手のひら、足の裏、脇などに左右対称にみられやすく、睡眠中は発汗が止まるのが特徴です。家族内で同じような症状がみられることもあり、遺伝的な関わりも示唆されています。
多汗症とは
多汗症には、はっきりした原因が見つからない原発性多汗症と、甲状腺の病気、糖尿病、更年期、感染症、薬剤などが関わる続発性多汗症があります。特に原発性局所多汗症では、左右対称に汗が多い、睡眠中は止まりやすい、若いころから気になる、といった特徴がみられます。
当院の多汗症治療は外用薬が中心です
くめクリニックの一般皮膚科案内でも、わき・手掌には抗コリン作用をもつ外用薬が保険適用で認められており、ほとんどの場合この治療法で改善しますと案内されています。日本皮膚科学会の2023年改訂ガイドラインでも、原発性腋窩多汗症と原発性手掌多汗症の診療アルゴリズムで、外用抗コリン薬は推奨度Bに位置づけられています。
このページでは、当院の主力治療である**エクロックゲル5%、ラピフォートワイプ2.5%、アポハイドローション20%**を中心に、分かりやすくご案内します。
わき汗の治療1 エクロックゲル5%
エクロックゲル5%は、ソフピロニウム臭化物を有効成分とする、原発性腋窩多汗症の治療薬です。1日1回、脇の下に塗布して使います。くめクリニック公式サイトでも、脇汗の治療薬として案内されており、当院で治験に関わった薬剤と紹介されています。
エクロックゲルは、汗を出す指令に関わる働きを抑えて、脇の下の発汗を減らすことが期待される外用薬です。公式の添付文書では、12歳未満の小児等を対象とした国内臨床試験は実施していないとされています。
使い方では、手に直接取って塗らないことが大切です。アプリケーターや容器を使って脇に塗り、手についた場合はすぐ洗います。目に入ると散瞳や霧視などの抗コリン作用による症状が出ることがあるため、目に入ったときはすぐ水で洗い流します。
副作用としては、皮膚炎、紅斑、そう痒感、湿疹、刺激感などの塗布部位の症状が比較的みられます。まれに口渇、排尿障害、散瞳、霧視など、抗コリン作用に関連する症状が出ることもあります。
わき汗の治療2 ラピフォートワイプ2.5%
ラピフォートワイプ2.5%は、グリコピロニウムトシル酸塩水和物を有効成分とする、原発性腋窩多汗症の治療薬です。1包使い切りのワイプ製剤で、1日1回、1枚の不織布を使って両脇に塗布します。マルホの医療関係者向け情報では、本邦初のワイプ型原発性腋窩多汗症治療剤と案内されています。
ラピフォートワイプは、汗腺のムスカリンM3受容体へのアセチルコリンの結合を阻害して、発汗を抑える薬です。くめクリニック公式サイトでも、脇汗の治療薬として案内され、当院で治験に関わった薬剤と紹介されています。
使い方のポイントは、清潔で乾いた脇に使うこと、左右の脇に1回ずつ塗ること、1回使い切りであること、そして使用後はすぐ手をよく洗うことです。添付文書では、9歳未満の小児等を対象とした臨床試験は実施していないとされています。
副作用では、接触皮膚炎、湿疹、皮膚炎、紅斑、そう痒感などの皮膚症状のほか、口渇、羞明、散瞳、霧視、排尿困難などの抗コリン作用に関係する症状がみられることがあります。マルホの情報では、手洗いをしっかり行うことで、無意識に目に触れて起こる副作用のリスクを下げられると案内されています。
手汗の治療 アポハイドローション20%
アポハイドローション20%は、オキシブチニン塩酸塩を有効成分とする、原発性手掌多汗症の治療薬です。1日1回、就寝前に両手のひら全体へ塗布し、両手でポンプ5押し分が目安です。久光製薬の発売案内では、日本初の原発性手掌多汗症治療剤とされています。
アポハイドローションは、エクリン汗腺にあるムスカリン受容体に作用して、抗コリン作用により発汗を抑えます。手汗は、握手、ペーパーワーク、電子機器の操作などで生活の質や作業効率を下げやすいため、日常生活に直結する治療として位置づけられています。
使い方で特に大切なのは、塗ったあとは手を濡らさないこと、朝に手を洗うまでは目など手のひら以外を触らないこと、密閉するような手袋をつけないことです。添付文書では、12歳未満の小児等を対象とした臨床試験は実施していないとされています。
副作用としては、適用部位皮膚炎、適用部位そう痒感、適用部位湿疹、皮膚剥脱、口渇などがみられます。添付文書では、視力障害、霧視、めまい、眠気への注意や、発汗抑制による熱中症への注意も記載されています。
どの薬を選ぶか
わき汗では、エクロックゲルとラピフォートワイプが主な選択肢になります。どちらも原発性腋窩多汗症に対する薬ですが、ゲルで塗るタイプか、1回使い切りのワイプタイプかという違いがあります。くめクリニックのFAQでも、それぞれにポイントがあると案内されています。
手汗では、アポハイドローションが中心になります。逆に、アポハイドローションの効能・効果は原発性手掌多汗症であり、エクロックゲルとラピフォートワイプは原発性腋窩多汗症が適応です。つまり、わき汗の薬と手汗の薬は分かれていると理解すると分かりやすいです。
外用薬で改善が足りないとき
この3剤が当院の多汗症治療の中心ですが、十分な改善が得られない場合には、次の選択肢を検討することがあります。日本皮膚科学会ガイドラインでは、重度の原発性腋窩多汗症に対してはA型ボツリヌス毒素局注が推奨度B、手掌・足底多汗症に対しては水道水イオントフォレーシスが推奨度Bとされています。
こんな症状はご相談ください
わき汗で毎日服がぬれる、汗じみが目立つ、手汗で書類やスマートフォン操作に困る、足汗で靴が蒸れてつらい、人前で汗が気になってしまう。このような症状は、我慢せず皮膚科で相談してよい内容です。多汗症は生活の質を下げやすい一方で、保険診療の外用治療で改善を目指せる時代になっています。
一方で、急に大人になってから始まった、睡眠中も汗が多い、全身に汗をかく、動悸、体重減少、発熱、強いだるさなどがある場合は、続発性多汗症の可能性もあるため、背景の病気がないかも含めて確認することが大切です。
よくあるご質問
- エクロックゲルとラピフォートワイプはどちらがいいですか
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どちらも原発性腋窩多汗症の薬です。エクロックはゲルタイプ、ラピフォートは1回使い切りのワイプタイプで、使い勝手が異なります。
- アポハイドローションは手汗の薬ですか
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はい。アポハイドローション20%の効能・効果は原発性手掌多汗症です。手汗が主な悩みの方に使う薬で、わき汗の薬ではありません
- 子どもでも使えますか
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添付文書では、エクロックゲルは12歳未満、ラピフォートワイプは9歳未満、アポハイドローションは12歳未満を対象とした臨床試験が実施されていないとされています。実際に使うかどうかは、年齢だけでなく症状の程度や生活への影響を見ながら判断します。
- 使うときに一番大事な注意点は何ですか
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3剤とも、眼に入れないことと、使い方を守ることが大切です。特にエクロックとラピフォートは使用後の手洗い、アポハイドは就寝前に塗って朝に洗うまで目などを触らないことが重要です。
堺市で多汗症のご相談は皮ふ科眼科くめクリニックへ
皮ふ科眼科くめクリニックでは、**エクロックゲル5%、ラピフォートワイプ2.5%、アポハイドローション20%**を中心に、わき汗・手汗の多汗症治療をご案内しています。皮膚科専門医が、汗の出る部位、困りごとの強さ、皮膚の状態、使いやすさを確認しながら、患者さんに合う治療を一緒に考えます。土曜日午後・日曜日も診療しています。